伊藤景司です。 http://twitter.com/kjmooon
このブログ記事は、「プロダクトづくりのための挑戦とその成功・失敗談を綴るアドベントカレンダー powered by プロダクト筋トレ」アドベントカレンダーの15日目の投稿です。昨日はFunakoshiさんの「ソリューションありきプロダクトの困難~ビジョンやミッション信じてますか?~」という記事でした。こちらもぜひ見てみてください。

ちなみに本日12/15は私の誕生日です。私のことを知っている人も知らな人も、誕生日プレゼントだと思ってぜひ最後まで読んで、いただければ幸いです(シェアも歓迎です)
いいプロダクトを作るだけでは不十分
さて、プロダクトづくりの話ばかりをしていると、やれプロダクトマーケットフィットだ、やれMVPだなど、そんな話ばかりになりがちです。
「いいプロダクトをつくること」が重要であることは疑いようのない事実ですよね。
ただ、
”ユーザーにとって価値がとてもあること”
と
“それがユーザーにきちんと届くこと”
は完全に別件です。
しかし、それを理解した上でスタートしてますか?というケースが結構あります。薄々わかっていながらも、
いいプロダクトは口コミで勝手に広まる
とか、
プロダクトレッドグロースだ!
などの言葉に振り回され、やってみたけど思うように結果が出ないことは往々にしてあります。
本当に往々に、、、。
めちゃくちゃいいプロダクトを作ったけど、全然売れない、、、
今までの記憶を思い出すだけで、ノイローゼになりそうになります。。。。
そんな過去の経験をもとに、実際はどうやったらいいのか?というところをシェアできればと思います。
明確なユーザー獲得のチャネルが分かってないのにプロダクトを作ってしまう罠
ローンチしたのにユーザー数が伸びない
ユーザーの課題から始まり、それを解決するプロダクトをつくるというのはプロダクトづくりの王道です。
初期には、
- ユーザーの反応がいい!
- めちゃくちゃ使ってくれる!
- マーケットもありそう
- 競合も見当たらない
などが見つけられると良い兆候ですよね。(これすらできていないプロダクトづくりも結構あるので)

しかし、ここまで確認できたとしても、実際にローンチしたら思ったとおりにユーザー数が伸びないなんてこと、ありませんか?
その理由は下記のようなものがあります。
- アーリーアダプターには売れたけど、マジョリティには理解してもらえない(キャズムを超えられない)
- 最初のユーザーは簡単に見つかったけど、広げようと思ったときに見つからない(コストがかかりすぎる)
- 実際には、そんなユーザーはいなかった(十分にユーザーのことを理解できていなかった)
一つ一つ説明していきます。
1. アーリーアダプターには売れたけど、マジョリティには理解してもらえない(キャズムを超えられない)
アーリーアダプターは新しいものに敏感で、どんどん試してみようと思う人達です。
その人達は多少理解が難しいものも、好奇心で乗り越えてきます。
しかし、マジョリティ層はそうは行かず、できる限りわかりやすくシンプルにコミュニケーションしていかないと、なかなかユーザーのほしいという気持ちを引き出すことができないケースが多いです。
特にそもそも少し複雑なサービスであればこそなおさらです。
2. 最初のユーザーは簡単に見つかったけど、広げようと思ったときに見つからない
初期のユーザーはうまく見つけることができたけれど、拡大しようと思ったときにユーザーが獲得できないということもよくあります。
ユーザーがそもそもそんなにいないケースもあれば、ユーザーを獲得する単価が著しく上がり、事業が成り立たないレベルになってしまうことも。
獲得単価を加味すると、やればやるほど赤字になります。ビジネスモデルが破綻していますね。
3. 実際には、そんなユーザーはいなかった
ユーザーは、無意識に平気で嘘を付きます。
この無意識というのがポイントで、全く悪気などなく、結果ウソになってしまうというところがむずかしいところ。
例えば、実際にはそんなに欲しくなくとも、「いいね」「発売したら買います」と言ってみたり。
言うこととやることは違うと思ったほうが良いですし、本当に支払いをするところまでテストに入れない限りは、それが本当かはわかりません。

プロダクトづくりの最初からユーザー獲得のチャネルをテストする
そこで重要になってくるのが、プロダクトづくりの初期の段階からユーザー獲得のチャネルをこってりテストするというやり方です。そもそも、ユーザーから逆算してプロダクトを作り始めるのはとても良いですが、それだけでは不十分ということです。
より具体的にいうと、ビジネスモデルキャンバスで言うところの、チャネルやコスト構造、収益の流れ分かっていないのに、プロダクトづくりをGoすべきでは無いということです。

軽く安く早くテストする
お手本みたいなやり方としては、SmartHRさんのやりかたが参考になります。

WordPressの3,000円のテンプレートとGoogleフォームを使って半日でつくり、Facebookで細かくターゲティングをして広告を2万円分出しました。ノイズがないように、自分たちのSNSでは一切告知せず、ひっそりと反応を観てみたのです。たった2万3,000円でここまで反応があったので、ニーズがあると確信することができました。
ポイントとしてはとにかく軽くつくることです。
具体的には、
- できるだけお金がかからないツールを使う
- 1日〜数日で準備ができる
- 実際にユーザーを獲得する
今は、studio.designやペライチなどを使えば、かんたんなものであれば数時間で作成できます。
テストの内容次第ですが、本当に初期段階では独自ドメイン取るなど有料プランの必要性も低いので、低コストでどんどん試すことができます。
ページ自体の作り方については、「ランディングページ」とぐぐるとたくさん出てきますが、例えばこのあたりが参考になります👇

ここでやってしまうよくある間違いとして、ランディングページをSNSで影響力のある人が拡散してしまうことです。
なぜ間違いかと言うと、そのユーザーがサービスに対して興味があるのか、インフルエンサーが好きで飛びついてしまったかわからないからです。
また、再現性もなくなってしまいます。
インフルエンサーマーケティングは本番まで取っておきましょう。
確かめたいことは、本当にこのプロダクトがユーザーに刺さるのかどうか?届ける再現性があるのかどうか?という点です。
連絡先を聞いておき、実際に話しを聞く
この次に大事になってくるのが、実際にユーザーの話しを聞くことです。
理由は下記です。
- なぜ申し込んだのか
- どんな人が申し込んだのか
- なぜいまなのか
- いま他の解決策はあるのか
上記を、できる限り具体的に、いろいろな角度から質問をします。

もとい、質問攻めをします。
かんたんな質問で分かった気にならず、できる限り具体的に質問していきます。
ちなみにインタビューは、訪問がベストです。
事情で難しい場合も多いですが、実際に会ったり、生活している空間に行くことで、聞かずとも認知できる情報が非常に多いからです。具体的にそのユーザーを理解することに役立ちます。
ここで最もよくある失敗はこれです。
アンケートをとってユーザーのことを分かった気になること
特に大きな会社でほどありがちな間違いです。
アンケートの調査結果を振りかざして、ユーザーはこんなこと言ってます!って意思決定していた人が、もともといた大手企業にもいたなぁと思い出しました。圧倒的に間違ってます。
このあたりはこのスライドがとっても詳しくかいてあるので、見てみると良いかと思います。
そのユーザーのことなら、語り尽くせないぐらい詳しい!という状態になることが実際には望ましいです。
予算を踏み込んでみて同じテストをしてみる
これはなぜやるかと言うと、小さく試す場合にうまくいくけども、多くのユーザーを同じやり方と同じ効率(例:ユーザーあたりの広告費)で獲得ができるかどうかをテストしてみないと、本当に事業を大きくしたときに、初期のテストが上手く言ったことが無意味になるからです。
必ず、同じ条件で予算を短期間でかけたときに、どれくらいの効率でユーザーを獲得できるか?というのはテストしてみましょう。
どの程度まで効率が落ちずにそれが実施できるのかで、事業としての価値が著しく変わってきます。
それ以外のチャネルのやり方をテストする
上記のデジタル広告を使ったやり方はとてもおすすめで、ソフトウェア、ハードウェア、B2C、B2Bなどに関わらず、一度は必ずやったほうが良いです。
ただユーザー獲得のチャネルというのはそれ以外にも色々あり、このトラクションという本が参考になります。
2015年と、書かれたのが少し古いのでいまいま適用できる部分とそうじゃない部分がありますが、ユーザーを獲得するチャネルとしては、下記があります。
(1)バイラルマーケティング
(2)PR
(3)規格外PR
(4)SEM
(5)ソーシャル/ディスプレイ広告
(6)オフライン広告
(7)SEO
(8)コンテンツマーケティング
(9)メールマーケティング
(10)エンジニアリングの活用
(11)ブログ広告
(12)ビジネス開発(パートナーシップ構築)
(13)営業
(14)アフィリエイトプログラム
(15)Webサイト、アプリストア、SNS
(16)展示会
(17)オフラインイベント
(18)講演
(19)コミュニティ構築
軽く試せるものと試せないものもありますし、コストというよりかはSEOのように時間がかかるものもあります。やりたいことは目的に応じて、何をどこまで試すのか、判断して進めていくのが良いです。
チャネルをどう選ぶのか?
試すと言っても全部試せないですよね。では初期のテストチャネルをどう選ぶのか?
これはユーザーヒアリングの際に、それらを聞くことがヒントになります。
直接的にプロダクトにまつわる質問だけでなく、ユーザーが普段興味を持っていることや、見ているサイトやアプリ、取得している情報の種類、普段行くところなど、ユーザーに関してできる限り詳しくなることで、そのサービスにおいてユーザーを獲得するであろうチャネルの仮説が見えてきます。
うまく行かない場合
上記かいていると、何かしらテストしたらうまくいくことが多く見えるかもしれません。ですが、多くのアイディアはうまく行きません。
よって、最初に書いたとおり「軽く安く早くテストする」ことが重要になってくるのです。
如何にこれを高速に回せるのか。それが成功確率を上げることに直結しているといっても過言ではありません。
途中でやめずやり続けましょう。
簡単なことではないですが、成功するまでやり続ければ、成功します。
ユーザー獲得の絶妙な事例
ユーザー獲得のうまい事例は、delyさんのクラシルがあります。

当時のユーザー獲得成功の要因は、
- アプリにユーザーを集める
- Facebookのアルゴリズムを理解しスキをつく
- 再生数が伸びた動画を使って、動画広告を配信する(ヒット率が著しく上昇)
クラシルの初期の成功は、量を重ね、仕組みをハックし、低コストでユーザーを大量に獲得する方法を見出したから、と言っても過言ではありません。
ただ上記を見てわかるように、ユーザー獲得の手法というのは日々変化や競争が激しく、どんどん移り変わっていくものです。
過去の事例がこうだから真似した、ではうまく行かないことが多いというのが難しいところです。
このあたりのトレンドには日々アンテナを張っておきましょう。

うまくいく可能性があると意思決定できた上でプロダクトづくりを開始する
今の時代、エンジニアでなくても簡単なランディングページなどを作れますし、FacebookやGoogleの公告も設定さえすれば、個人でも簡単に打てます。
できる限り少人数で、テストしたい仮説をどんどんテストできる環境を作ることが重要です。
これらもやればやるほど早くなってきます。
ランディングページも作れば作るほど、うまくなっていきます。
百聞は一見にしかず、もとい、見るだけでもなくやってみることです。
私自身もですが、どんどんテストを重ねると、それらの仕組みの裏が見えるようになり、誰も気づいていないポイントを見つけたときに、そのプロダクトが成功する確率が一気に高まります。
プロダクトづくりとユーザー獲得は、場合によっては喧嘩が起こるようなトピックでもありますが、どれだけ同じテーブルの上で考え、考え抜き行動しきれるかが勝負です。
以上です。
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アドベントカレンダーの明日は @okada_seira さんです〜。
伊藤景司